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・専属カメラマン・
「柿谷~」
教室後方の扉から顔を覗かせた宇津井が、窓際の席でぼんやりと窓の外を眺めていた由夏を手招きした。
由夏が立ち上がってそちらに向かうと、宇津井は申し訳なさそうな顔をしながらも、
「いつものお願い」
と顔の前で両手を合わせてから、自分の肩越しに廊下を指差した。
由夏は宇津井の指の先をちらりと確認すると、苦笑いしながら小さく数回首を縦に振って、宇津井に続いて廊下に出た。
そこには下級生の女の子が二人待ち構えていて、由夏の姿に気づくとお願いしま~す、とスマホを差し出した。
由夏がスマホを受け取ると女の子たちは、宇津井を挟むように両側にさっと別かれて立った。
「じゃあ、撮るね~」
由夏はスマホのカメラを彼らに向けると、タイミングを計るフリをして、その中央で照れ笑いしている宇津井を数秒見つめた。
普段は恥ずかしくてまともに見ることのできない、その少し目尻の下がった優しい笑顔を目に焼きつけてから、
「はい、3、2、1!」
とシャッターを押した。
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