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 本当に若くてきれいなお母さんねと、母親に手を引かれてドラッグストアに買い物に来ていた幼い悦に、ドラッグストアの婦人が少し興奮気味に、面と向かって悦にそう言うので、それを聞いた若い母親は照れて笑い、顔を赤らめていたが、それを見上げた幼い悦は、本当に美しくて可愛らしい母親だと認め、それを嬉しく、幼いながらも誇らしくさえ思った。  悦は美しい母親が大好きだった。  そしてその母親も長男の悦を溺愛し、いつも息子に向き合っていて、悦の一番の理解者であろうと、常に心を砕いていた。  そんな悦に注がれる、母親のまなざしを、悦はいつも温かく感じていた。  しかしその夫である悦の父親は、まるで子供に興味がなく、目の前で悦が転んだとしても、自分の頭を掻くだけだし、全身泥んこになって悦が帰ってきても、フンと鼻を鳴らすだけであった。
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