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高校卒業後、カフェの店員として働き始めた直子は今年で30歳になった。だが未だに結婚出来る相手が見つからない。
恋をする相手はいつも、彼女や奥さんがいる男性ばかり。
だが男性側はいつも、
「彼女や奥さんはいないよ」
と言う。相手の言葉を信じて付き合い始めたり、夜を共にするのだが...
何故かいつも、二番手・三番手になってしまい、直子だけを見てくれる男性に出会えていない。
その理由が彼女には分からなかった。
周囲にはたくさんの愛し愛されるカップルがいるというのに、どうして私には現れないの?
そんな疑問を抱きながら、周囲を羨む日々。
例えば、後輩のあゆみのシフトが終わる頃、
「あーゆみ!あと少し、頑張ってね!」
「はいはい、ありがと」
彼氏が必ずあゆみを迎えに来る。
シフトが終わるのは夜8時。日本語ペラペラのイギリス人彼氏は夜道を女性一人でましてや愛する人を一人で歩かせたくない!
そんな思いがあるようで、自分の仕事が終わったら必ず迎えに来るのだ。結婚する日も近いのではないか、と職場では噂になっている。
「覚悟しておけ!子育ては、睡眠不足との戦いじゃ!」
こう語っていたのは、高校からの友達サナ。
サナは保険のセールスレディとして男顔負けの給料を稼ぐやり手の女性だった。
直子と同じように30歳を迎えたサナは、学生の頃から憧れていたハワイで1ヶ月の休暇を楽しんでいた際に、たまたまハワイに出張で来ていた日本人と恋に落ち、妊娠が発覚したので結婚をした。
できちゃった婚ではあるが、IT系の仕事をしている旦那は在宅勤務をしながら、家事も育児も協力してくれているという。
サナは育児についての不満を話すが、それでも幸せそうに笑う姿を見て、羨んでいた。
『あなたにはいるじゃない。
私には誰もいない...』
幸せな人の話を聞く度に、直子は思っていた。
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