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手を合わせて、心の中で繰り返し願い、目を開けた。
すると、目の前に神々しく光るものがあった。
「え...?」
目の前に光があったかと思うと、光は一瞬で視界を覆い尽くした。
何が起きているか分からない、これは現実なのか、それとも夢を見ているのか?
直子は不思議な感覚に囚われながら、自分の周囲を囲った光を見回した。
すると...
「...ひぃ...ふー!」
「はい、力んで!頭見えてるよ!」
「美千子!後少しだ、ひぃ、ひぃ、ふー!」
目の前に映ったのは、両親の若い頃の姿だった。そして、自分を懸命に出産しようとしている母。そんな母と一緒に汗をかき、応援する父。
「んぎゃー、んぎゃー!」
映画のように光の中に映った映像は少し早送りされ、自分が生まれた瞬間を見せた。
「直子...素直で、実直で、愛される女の子になってね...」
そして、母が赤ちゃんの頃の自分を抱きしめて名前を付けていた。
そんな母娘を見た父は、泣きながら、直子!と叫んでいた。
「お父さん...お母さん...」
この映像を見た直子の瞳は潤んだ。
光は次の映像を見せた。
「なおこちゃんの自転車の鍵、どこー?!」
「どこ行ったー?!」
小学3年生くらいだったか。
真夏の日曜日、友達と川遊びをしていた時にポケットに入れていた自転車の鍵が何かのはずみで落ちてしまったのだ。
この年頃はまだ素直だった。
友達が困っていたら助けよう、そう考え、純粋に行動できていた頃。
結局、鍵は見つからず、泣きながら家に帰った。
正直に自転車の鍵を無くしてしまったと、両親に伝えると、怒られるどころか抱きしめられた。
「こんなにびしょ濡れになるまで探して...大変だったね。大丈夫だから、お風呂入ろう!」
大泣きしながら謝っていた直子を、両親は優しく抱きしめてくれた。
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