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光の中に現れる過去の映像を見た直子は、涙が止まらなかった。
「うっ...うう゛...」
涙も鼻水もとめどもなく溢れてくる。
「あ゛ぁ...!」
ついには子どものように大きな声で泣き始めた。
最近愛された記憶がないからと言って、一度も愛されなかった訳ではない。
30歳になると、ずっと一人で生きてきたという気持ちになるが、そうではない。
ずっと誰かが直子を愛してくれていた。
側にいて、励ましてくれていた。
愛しているからこそ、厳しい言葉があった。
愛されているからこそ、ここまで生きることができ、大人になることができた。
それは両親や友達、恋人からの無償の愛...
もう愛してくれる人はいたのだと、気付かされた。
【あなたは本当に一人でしたか?
あなたを愛してくれる人は、本当にいませんか?】
神々しい光の中、愛された記憶の映画は終わり、なんとも美しい声が直子の心の中に響いてきた。
「一人じゃ、なかった...
いっぱい、いっぱい、愛されてた...」
直子は泣きじゃくりながら、かすれた声で答えた。
すると美しい声の主が微笑んだような...そんな気がした。
【周りをよく見てご覧なさい。
あなたを愛してくれる人は近くにいます。
あなたがあなたを愛することが出来たとき、あなたを愛してくれる人がみえてくるでしょう】
「はい...ありがとうございます...ありがとうございます...」
初めて聞く、何にも形容しがたい美しい声。
その声の主に、直子は心から感謝をし、何度も何度も礼を言った。
飽きるほどに、何度も...
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