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「だってさ、その煙草のデザイン何年も前のなのに煙草は一本も減ってないし、子供の書いたメモ、わざわざ煙草の箱に挟む?何年も前から持ち歩いているんじゃないの?」
「じゃ、どうする?」
「持ち主に返してあげたいけど……」
「交番行く?」
「それはちょっと……」
不安そうな美晴の顔を見て、俺は決める。
「よし!ならここで待ちぼうけだ。昼飯にしようぜ」
「拓人……。そういうとこがやっぱり拓人だよね」
俺らは道のはしにじかに腰を下ろす。
「落ち葉がたまってるから、お尻汚れないよね?」
「汚れは洗濯すれば落ちる!」
美晴はまた呆れるが、あっさり諦める。
「早く落とした人が来るといいね」
「美晴の勘が正しかったから来るよ」
「もう」
紅葉を見上げながら、サンドイッチをかじり、コーヒーを飲む。それと中身のない会話。
「煙草ってさ、なんであんな字書くの?」
「まんまの字じゃん」
「あれで『たばこ』だって小学生は読めないだろ?」
「そう言えばそうだけど、そんなのいっぱいあるでしょ?狼煙だって小学生に読めないでしょ?」
「煙繋がりか……」
悪くない時間。道行く人は、俺らを避けるように歩くが気にしない。待ちぼうけってそんなものだ。
サンドイッチを食べ終わり、コーヒーだけで時間を潰す。その俺らの前に何かを探しているような男性が現れる。その後ろに一人の少女。
「もう諦めようよ、お父さん。煙草なんて誰も拾わないから」
俺は立ち上がり、その少女に近付く。
「もしかして、これのこと?」
俺は咄嗟に少女に拾った煙草を見せる。
「え?拾ってくれたんですか!?お父さん、あったよ!」
少女の前を歩いていた男性は振り返り俺に近付く。
「これです!これです!ありがとうございます!」
俺は男性に煙草を手渡す。男性は大事そうに煙草を抱きしめる。
その様子を見ていた美晴が俺の横に立ち、気になっていたであろうことを口にする。
「それは大事なものなのですか?」
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