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「……その歯であってます。男性の歯を好きになったのは初めてなんですが、ノーマルなんで家に返してください。誰にもいいません」
「俺が男女問わずたまに持ち帰ってるのはわりと有名だから別に言ったって構わないんだけど。……そうか、歯か。そういえば妙に顔の下半分ばかり見られてる気がしてた」
えっ有名なの? 何か、ものすごく嫌な予感がしてきた。少し及び腰になるが、手が拘束されていて逃げられない。真っ暗な視界に不安が激しく沸き上がる。
「俺の顔を覚えてないってのは結構衝撃だな、ビジュアルは悪くないと思ってるんだけど。でもそうか、歯が好きなら歯だけ見てればいいんじゃないかな? 俺もあんな熱っぽく見つめられたのは初めてだったし」
「ほんと、無理です、男同士とかまじで勘弁してください」
そっとアイマスクが取り払われ、俺の目の前にはカナデさんの歯があった。軽く笑って唇のすき間から垣間見える歯。キスできそうな距離感。
さっきの誘拐されたと思った時とは別のベクトルで心臓が高鳴る。呼吸が荒くなって、アレが少し反応する。ヤバい、歯が白い。眩しい。舐めたい。
ハァ……
「へぇ、本当に歯なんだ」
冷静な声に気づいて顔を見る。確かに整っている、ような、あれ? 意外に女顔? きれい、系? 目元が涼やかで、鼻が高くてハーフっぽい。まつげ長い。でもやっぱり歯が素敵。
意外とありなんだろうかと思って本能的に胸元を見ると平らだった。肩幅が女と違う。やっぱ男だ。歯を見なければ冷静になる。男同士って相手のチン〇しゃぶったり尻でやったりするんだろ? それはほんと生理的に無理。
「あの、でもやっぱ男同士でするとか気持ち悪いので」
「嫌ならしないよ、というか無理にするだけならもう襲ってるよね? そこは安心して」
うん、そうなのか?
えーと、確かに服は着たままだ。
「それで、歯が好きな人って歯で齧られたりするのも好きなものなのかな」
うっすらと笑う口から奇麗な歯がのぞく。
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