歯ヲ齧ル

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注:2ページ目までは『骨ヲ齧ル』とだいたい同内容です。 顎の骨をさわさわと往復する何かの感触で目が覚めた。 んぅ……。 頭がぼんやりする。目を開けても真っ暗なまま。なんだこれ。 うん? これ、アイマスク? 耳にかかる紐の感触。なんで? 起き上がろうとして体を動かすとさらに違和感。 んん? なんだ? 「あ、起きた?」 誰? 突然の知らない声。左右を見渡しても真っ暗なままだ。 ほんとに誰!? 怖い。頭が急いで目を覚ます。 「ちょっ!? 誰何?! なんなの!?」 「落ち着いて?」 ぽんぽんと胸を叩く手の感触。 暴れて気がついた。脚は自由だが両腕を頭の上で拘束されている。 「落ち着けるか!! すぐに離せ!! 手、はずせ!」 5分ほど暴れて疲れて一息ついたところで、またあの声が聞こえる。 「えっと、ごめん。嫌なことはしないから。水飲む?」 「じゃあこの手縛ってるのほどけよ。すごく嫌。……水はほしい」 5分ほど叫んだのもあって喉がカラカラだ。 肩の下に手を入れられ、上体を起こされる。顎に手を添えられて唇にガラスのコップの感触。 人心地つくと、急に状況が気になった。 この声。聞き覚えはない気がする。起こされた時の力強さからは男性か? 丁重に扱われているような気はする。手も多分タオルか何かで巻かれた上で拘束されてるから暴れても痛くなかった。 それから目隠しされてる。目隠しで拘束ってこのシチュエーションって誘拐か何かか? 誘拐って大人でもさらわれるのか? 俺、金持ってない。 「誘拐か? 俺をさらっても金なんかないぞ?」 プッと小さく笑う声。 「まぁさらってきたというのは的を射てるけど、お金はむしろ払ってもいいくらいだよ。ちょっと話したいなと思って」 ? 話したい? 話したいからって拘束しないだろ。 「それより手を解いて、嫌だから」 「……そもそもこの声に聞き覚えはないの?」 スルーすんなよ。
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