君に捧ぐ赤い糸

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ああそういえばと不意に、出会った頃を思い出す。 大学に友達のいない俺を見つけては隣に座り、君は優しく笑いかけてくれた。 「隣、座ってもいいかな?」 眩しい笑顔を前にして、俺に拒否権はなかった。 頷くだけしかできなくても、嫌な顔ひとつせず話題を振ってくれる曇りのない眼差しは、いつも俺の心に淡い光を灯してくれる。 どうして自分なんかを気にかけてくれるのだろう? 広い講義室の中、わざわざ話しかけてくれる嬉しさを前にして、そんな疑問符はいつの間にかどこかに消えていったんだ。
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