君に捧ぐ赤い糸

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大学で講義を終えて帰る途中だった君を車に乗せて、俺の住むアパートへと向かう。 最後に、感謝の気持ちを伝えたくて。 畳四畳半の狭い部屋の中でうずくまり、項垂れる彼女を前にして、俺はその背中に腕を回す。 「やっとこうして、君を手に入れれた」 君と俺を繋ぐのは赤い糸、そうだろう? 「ごめんなさい、私…………っ」 だってこうして、ふたりきりになれたんだから。 「いや、いいんだ。違うやつのことが好きなのに、俺にまで優しくしてくれてありがとう」 やっと、邪魔者のいない空間で……ふたりきりになれたんだから。 ゆっくりと押し倒せば、雑音の溢れる世界に終わりを告げるようにして瞳を閉じる彼女。 「本当に、ありがとう」と短く告げて俺はより一層、腕の力を強めて手の平にある温もりを握り締めた。
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