(三)

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 「何も知らない」「わからない」を繰り返したティムに、困り果てたのか、「もういい」と男性は首を少し横に動かして出るように言った。 「あの部屋にいた青年はどこですか。私は彼に用事があります」  ティムがそう言うと、廊下のベンチで待っていろと公安の男性に言われた。しばらく待つと、青年がやってきた。 「あのロッカーで受け取ったものを渡してもらいたい。そうすれば、君のコレクションは全て返そう」 「あるんですか?」 「我々が持っている」  そうすると青年は安堵したのか、色々話し出した。あのポルノビデオは、長野の田舎からやってくる母親と妹に見られないためにコインロッカーに預けたこと。妹は受験のために親とともに上京し、自分の部屋に泊まることになったこと。このポルノビデオの女優がことさら好きであり、彼女の作品ばかり購入してしまっていることなどだ。 (続く)
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