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01,元凶
生を実感する度に絶望する。
自殺も成功せず、のうのうと生きている。
しかし人間とは非常に身勝手なもので、死を切望していながら自ら命を絶つよりも他殺されたいと思ってしまっていた。
殺されたのならばその時僕はきっと静かに瞼を落とすだろう。
ああ、そうだ。念の為これだけ伝えておきたい。
僕は生きる糧が全く無かったわけではない。
むしろ好奇心旺盛、多趣味で毎日何かに没頭していたくらいだ。
そんな僕にとって死は最も美しい概念だった。
どうしてその思想が生まれたか?
そうさな、ではここからは僕の記憶と感情の話をしよう。
何、ただの昔話さ。
まだ二桁の年齢になって間もない頃、親戚の葬式で見た故人の顔はあまりに美しく、内臓がきゅっとした。
その時からだ、生と死を見つめ始めたも、死の魅力に気付いたのも。
それから僕は殺人を題材としたノンフィクションを好んだ。
ミイラや人体に興味を持った。
元々勉強に関しては成績優秀だった為、自然と医者を目指すようになった。
会社を経営し、金に目が無い父や夜の商売をしていた母にも大賛成されたのを鮮明に覚えている。
しかしその頃はまだ小学生。
殺人や自殺欲求はまるで小さく、自分でも気付かない程だったのだろう。
優等生で友達も多く、家庭環境以外は非常に恵まれていたと今では思う。
というのも、父と母は喧嘩が多く、父に限ってはDV常習犯であったから。
父の機嫌が良い時は心底安堵した。
次第に声を荒げる事が多くなり、驚く程にあっさりと心は離れ始めた。
物心付いた頃から僕は父が嫌いだ。
予想も出来なかった真実を知るのはもう少し先だ。まず話を戻そうか。
僕の小学生時代の話にさ。
僕の誕生日にはクラスメイトの八割が自宅まで押しかけて来て母が困惑していた事もあった。
当時は気付かなかったが思い返せば幸福を具現化したような出来事だ。
勉強も交友関係も順調なこの日々が続くと思っていた。
だから前述の欲からも目を背けていられたのかもしれない。
人は良くこう言う「人生はそう上手くいかない」と。
中学進学直前に転校が決まった。
歯車が狂い始めたのはきっとそこからだ。
もう少し、昔話を聞いてくれるかい?
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