02,引金

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02,引金

小学5年の冬、僕は初めて新しい環境を体感した。 初めて見たんだ。 クラス内ヒエラルキーやいじめを。 "標的"は知的障害を持った女の子だった。 クラスメイトだが、授業は特別教室で受けている子。 正直心底くだらないと卑下していたが、郷に入れば郷に従え。気付けば僕もいじめる側になっていた。 いじめられたくは無いから。 でもこの教室はあまりにレベルが低すぎる。 狭間で揺れ動いた。苦痛だった。 そんな時、同じく狭間にいた友達にインターネットの世界を教えてもらった。 衝撃と期待、そのボックスの中は輝いて見えた。 最初は父のパソコンを借りて友人に教えてもらったサイトを見ている程度だったが、僕専用のパソコンを貰ってからはネット世界に入り浸った。 そこでは学校よりもたくさんの意見があって、カラフルなアイデンティティがある。 まるで無だった僕の生きる糧になった。 家庭環境の影響でほぼ話さず、 いじめもしない僕は当然、ヒエラルキー最下位になっていた。 中学2年生の時、 クラス替え直後から僕へのいじめは始まった。 学年でも目立っていた女子と同じクラスになったのが元凶なのか。 何故か僕は嫌われていた。 それまで話した事も、目を合わせた事すら無かったが。 音楽が好きで入った吹奏楽部でも先輩から日々虐げられた。 否定が好きな親はいじめられている僕を毎日責めた。 「お前が悪い」と。 叩かれて、罵倒されて。そんなのは当たり前で。 安らぎの場が無く、心が死に始めた。 死んでしまった時もあった。 全くの虚無。 今ここまで読んでくれた君には理解出来るだろうか。 精神は安易に息を引き取るのだと。 心は死んだまま肉体だけ生きている苦痛があると。
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