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03,覚醒
心が死んでいた中学時代、
変哲の無い朝食中に実家の固定電話が鳴った。
親戚が亡くなったらしい。
父の実姉の夫。
不慮の交通事故だった。
早朝 積載過多のトラックに突っ込み、ほぼ即死だったようだ。
事故後、親戚が運転していた車両も見に行った。
血に染まった飴の袋は何故か記憶に深く刻まれている。
「彼は飴が好きだった」と呟いた妻の表情も。
数日後。
学校を休み、葬式に出席した。
元より学校にはまともに行ってなかったので違和感や背徳感は全くと言っていい程無い。
しかしそこで、懐かしい衝撃を受けた。
傷だらけでも眠るように棺に収まっている姿を見て
また、この世で最も美しいと思ってしまった。
でもきっと人間とは"そういうもの"なのだろうと脳裏に刻まれた。
いかんせんまだ義務教育を受けている身の未成年だ。
あまりに未熟で浅はかで、経験を積み成長する真っ只中。
何が『間違えている』かは解らない。
火葬の日、大人は皆泣いていた。
誰にでも高圧的で血も涙も無い身勝手な父でさえ泣いていた。
どうやら昔、かなり世話になったらしい。
その光景があまりに衝撃的で身震いした。
僕は、父の絶望を酷く喜んでいた。
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