05,想起

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05,想起

僕の幸せとはつまり、 他人の不幸だけのようだ。 親を含めた他人に訪れる不幸は僕にとって最高の幸せ。 しかしこれは人間の深層心理である筈だ。 僕は正しい。 誰も皆、己の幸福以外に興は無いのだから。 眼前の光に目が眩むのは生物の必然。 ネガティブバイアスという言葉がある。 端的に言えば悪い部分の方が印象に残る心理現象。 現代ではSNSがいい例だ。 七割が愛らしい子猫の写真でも、三割の誹謗中傷で全てが悪影響として捉えられる。 理由は単純、ヒトの脳はそう出来ているから。 十人十色という言葉が当て嵌まる。 善悪の基準は細胞のように完全個別。 僕を肯定しろとは言わない。 僕は誰も肯定しない。 親戚の葬式から数日、 脳内は思考と倫理と欲望で忙しなかった。 そして、答えを見つけてしまった。 脳裏にあったものに顔を背けていただけかもしれない。 「死体が好き。死による絶望が好き。  ……死の瞬間を見てみたい」
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