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06,興味
"死の瞬間を見てみたい"
その思いは真っ直ぐ脳天に刺さった。
決して微々も揺れる事すらない程しっかりと。
元より既存していても気付かない海底の砂のような感情。
死を見るだけではなく体験したいとも思い始めた。
「死にたい」
「殺したい」
そう気持ちを曝け出す度に周囲は僕を揶揄した。
次第に会話そのものが億劫になり、コミュニケーションをやめた。
学校に友人はいない。
家族とも一切の口を聞かない日々。
人生を投げ出したいわけではなく、あくまで興味本位だった自殺願望は膨らみ続けるばかりだった。
初めてリストカットをしたのは齢17の頃だ。
経緯は曖昧だが、剃刀で手首を切った。
なみなみと血が溢れ、不思議と痛みより快感が勝っていた。
無論、この程度の行為が自殺未遂の一環だとは思っていない。
強いていうなれば"興"という"欲望"だろうか。
切るとどうなるか。
血はどのくらい出るか。
その痛みを知りたい。
俗世では嫌悪されている行為も僕にとっては実験や欲の解消でしかない。
件に関して同意してくれる者は恐らく少なくはないだろう。
実験、といえばもう一つしてみた事がある。
所謂"首吊り自殺"だ。
とある夏の夕暮れ、
睡眠薬を飲んだ後、背の高いベッドの端に紐を括り、首を掛けた。
覚えているのは自室にいた飼い犬の丸い目。
しかしすぐに妹に見つかり、救急車で病院へ運ばれ、後遺症も無くその"実験"は幕を閉じたのだが。
こう書いていると改めて僕は欲望を解消し切れていないな。
食欲は食事で解消するのに。
性欲はセックスで解消するのに。
死という欲は何故こんなにも解す事が難しいのだろう。
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