5 一緒に過ごす時間

1/13
前へ
/86ページ
次へ

5 一緒に過ごす時間

翌朝 「パパがいる。」  理奈の声に目が覚めた。  昨日、慌てて買いに行ったTシャツとスウェットパンツで寝ていた理も理奈の声に目が覚めて、ここがどこか思い出したようだった。 「おはよう、理奈。」 「おはよう、パパ。」  メガネを外している寝ぼけ眼の理は、理奈に本当にそっくりだ。 「あずは、理奈をこども園送って会社へ行ってて、俺は一旦マンションで着替えてから出社するから。」  昨夜、色々、離れていた間にあったことを話した。 6年全てを埋めるのは無理でも、ちゃんと話せば伝わる。 私たちに必要なことは、些細なことでも話し合うことの積み重ねだねって言われた。 「パパ!お支度できたよ。」 「それじゃ、理奈。また土曜日な。」 「えー。理奈はパパとこども園行きたい。」 「パパは帰りいないから、ママと自転車で行かないと帰りは歩きになっちゃうよ。」 「理奈、歩くよ。」 「じゃあ送ってくよ。」  出かけようとしてチャイルドシートが、大輔さんの車に乗せっぱなしな事に気付いた。  理奈のチャイルドシートがなければだめだ。 「理奈を車に乗せるなら…」 「ジュニアシートならあるよ。 いつも拓哉を連れて出かけているから。」 「この前の男の子?」 「ああ。1月生まれだから理奈と同じ学年か。義姉さんが今つわり酷くて、兄貴が仕事で俺が忙しくない日によく預かっているんだ。」 「昨日は良かったの?」 「お袋が見てたと思う。敷地内別居してるから。」  アパートからすぐのコインパーキングまで、3人で手を繋いで歩く。  こんな日が来るとは思っていなかった。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4082人が本棚に入れています
本棚に追加