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私たちがリビングにいる理奈と大輔さんを横目に和室に通されるのを大輔さんは目だけで応援してくれる。
和室には、私の実の父、相良義晴のための仏壇があるので、まずお線香を理と順番にあげてから、座卓についた。
「はじめまして。宝田理と言います。あずみさんとは彼女が大学1年、私が3年の夏からお付き合いさせていただいておりました。
私の家のゴタゴタに巻き込んで、あずみさんが身を引く形で私の元を去ったため、理奈を生んで苦労してきた事を最近まで知らなかった大馬鹿者ですが、再会してもう一度あずみさんと歩いていきたいとお願いに来ました。
どうか結婚を許してください。
お願いします。」
母に土下座する理の横で私も頭を下げる。
「あずみがあなたの元を去った、理奈の事は知らなかった。
そうなんですね?
あと理奈ではなく、あずみのために結婚したいと?」
「はい。もちろん責任ではなく、私があずみさんといたいのですが。」
静かに立ち上がり、理の前に立った母は、理の顔を上げさせると思い切り右頰にビンタした。
「いってぇ…」
「今のは、あずみの母として娘に妊娠させたあなたへの分。
歯を食いしばりなさい。」
次はグーで左頰に命中…
理は、耐えているけど痛そう。
「あなたの都合ですることになった、あずみと理奈の6年の苦労の分よ。これで許してあげるから。
あとはあずみね。
あずみもちゃんと彼に理奈がお腹にいる事は、言うべきだったんじゃない?」
叩かれると思って、身構えていると母は私の両頬に手を添えて、軽くペチペチと叩いている。
「ホントにバカね。しなくてもいい苦労背負い込んで。
理奈を産むなと言う気は無かったけど、宝田さんの事も話して欲しかったわよ。」
「お母さん。ごめんなさい。」
「さて、理奈が待っているからリビングに行きましょう。
あ、宝田さん。明日、顔が腫れたらごめんなさいね。一応冷やした方がいいわよ。」
ケラケラと他人事のように笑いながら、部屋を出て行く母を見送った。
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