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やがて、背後に忽然と。一際存在感のある気配を感じたかと思えば、野太い腕が二本ぬっと自分の胸元から生えて、今までコンクリートについていた膝どころか、両脚諸共空中にぶら下がる。
「俺が連れて行こう」
後頭部付近。低く、落ち着いた、やや年齢を重ねた貫禄のある声が降る。羽交い締めにし、容易く持ち上げた人間のものだろう。
「うっぷ・・・なんか、キュウにきぼぢ悪かったくなっでぎだ・・・」
「──には俺が向かったと────。引き続き業務に──。責任は俺が────」
頭を垂らし、突如猛烈な吐き気と頭痛に見舞われ現状を把握する余裕が無くなった自分を他所に、周囲は着々と何かを何かし、何かを何とかしたと思っていれば、コマ送りのように時間が淡々と進んでいく。
──あれ? フツカヨいでもした・・・? ノみすぎた? ん? もうノんでいいトシだったっけ・・・?
依然として羽交い締めにされたまま。カツカツと革靴が整った廊下を足早に進む音をBGMに。
朦朧としつつ、時折寝落ちしそうなのを気合いで堪えながら、元々ない頭を振り絞って状況を整理しようと努力する。
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