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私は自分のアパートで寝転がっていた。電気が付いていたし、買い物袋の中身は空になっていて、キュウリは野菜室の茄子の隣、牛乳は倒して棚の二段目にきちんと収まっていた。家に着いたなり、疲れて眠り込んで変な夢でも見ていたのだろうか。
コンロの上には、鶏肉とオリーブのトマト煮込みの入った鍋が湯気を立てていた。ソースをひと舐めすると、程よく効いたにんにくとハーブの香り、トマトの濃厚な旨味が広がった。別れた彼とよく行ったあの店の味にそっくりだ。私はこれまでこんな風に再現できた試しがない。
リビングに戻ると、テーブルの上に名刺大の紙切れが一枚置いてあった。
遺失物係 いつでも用命承ります
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紙の隅には「あなたは少し脆いようだから、無理しないで生きて。たまにねじを締め直しにおいで」と走り書きがあった。
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