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第一現象・皮膚に刻まれた痣
松田圭介は柘榴の紅い実の中に隠れ、恐ろしい呪術師が自分に敵意を持ち、恐ろしい計画を進めている事など知る筈がなかった。
『妄想の能力を封印しているのだ』
しかしその夜、悪夢の中でその存在を感じ始める。柘榴の実の皮がナイフで切られ、赤い粒が弾けて飛び散り、全裸で眠る圭介の胸の皮膚に切り傷ができた。
ゆっくりと瞼を開け、圭介はその血を手で拭い、舌で舐めて正面を向いて睨む。
『誰だ?俺を呼び覚まそうとするのは?』
鍛え上げた筋肉が隆起して、左の上腕にある柘榴の痣が赤く浮き出て輝く。
松田圭介は夜明け前に柘榴の実の皮を破って外へ出るシーンを夢で見て、自室のベッドの上で目を覚ました。
この時、自ら柘榴の赤い実を潰して血色のスクリーンに妄想を映し出せば、母の死と敵の存在にもっと早く気付いたかもしれない。
『瞳が血で濡れようが、肉の内部をナイフで切り裂く男を探すべきだった……』
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