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その日の天気予報は晴れだったが、マンションを出て通りを歩いている途中で空が真っ黒になり、電車の窓ガラスを叩き付ける雨雫を見て、圭介は柘榴の悪夢が不吉な予兆であると確信した。
田舎から都会へ来て横浜の大学に通い始めて二か月程であるが、早くも過去の因縁が纏わりついている。
「圭介って、不思議な能力があるらしいね?」
そんな噂が流れて、大学の女子生徒から質問された。数日前に校舎の屋上から飛び降り自殺をしようとした学生を助けたのが、自分にとっては不運だった。
『妄想の能力者』
『呪いの継承者』
『墓場から蘇った子供』
『柘榴の家紋』
数年前、田舎の中学校の音楽仲間がSNSで柘榴の痣の写真を添付して、そんなツイートが拡散した。バンドの人気アップを期待した宣伝だったが、圭介はその生徒を殴って音楽を辞めた。
それを見た事のあった大学生が圭介じゃないかと言い始めたのである。
蒸し暑い日もジャケットを着て隠していたのだが、左の上腕の痣は目立ちすぎた。
そしてその日、大学の初年次ゼミナールの仲間が図書館のパソコンで資料を作成中に手首に四角い傷線の痣が発症したと騒ぎ出した。
「の、呪いじゃないの?」
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