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「全くもう、犬が踏んづけて怪我でもしたらどうするのよ」
朝早く犬を連れて散歩していた少女ジェシカはプンプン怒っていました。
それは手に持っているメガネのせいです。
メガネの左側にはヒビが入っています、さっきジェシカが踏んづけてしまったからです。
「よくもまあ、大事な眼鏡を落として平気で帰って行く人もいるもんだわ! もっとも、雪の中に落としたら二度と探せないかもしれないけれど」
怒ってはいるけれど、自分が壊してしまった罪悪感も少し。
困っている人がいなければいいな、と心配にもなりました。
そんな中、犬が何かを見つけて走り出しました。
「なに? どうしたのよ、突然!」
犬に連れられてやってきたのは、あのちょっと風変わりになってしまったベンチに座る雪だるまの前。
「やだ、なにこれ」
ふっと息をもらして思わず笑ってしまってから。
「……、もう使い物にならないものね、ごめんなさい」
手に持つメガネを雪だるまにかけてやりました。
さっきまでの怒りも罪悪感も、
さっきよりもっと奇妙ですっとんきょうになった雪だるまを見ていたら。
心がスーッと鎮まって、笑みすらこみ上げてきます。
「ちょっぴり遅いメリークリスマス! 私のじゃないけれど貰ってあげて? でも返して欲しいって人が現れたら、その時はよろしくね」
壊れたメガネを雪だるまに託し、ジェシカは晴れ晴れとした気分でまた散歩に戻っていきました。
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