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朝、まだ太陽が上がらないうちに病院の掃除のお仕事に出掛けていたサーシャおばさんが、
大きな体を揺さぶりながらズンドンズンドンと雪道を帰ってきました。
「疲れたわ」
誰に言うでもなく呟くのはサーシャおばさんの日課。
いつもの日課はそれだけではなく公園の前の自販機で温かいコーヒーを買い、
ベンチに座りそれを飲んでから家に帰ること。
けれど今朝はいつもとは違います、ベンチにも雪が積もっていたからです。
それに気づかずにコーヒーを買ってしまったのは本当に疲れていたからでしょう。
「あら、先にいらっしゃったのね」
ベンチに腰かけているあの可笑しな雪だるまにサーシャおばさんは苦笑しました。
「いいわ、どうせ私は座れないし、今日はあなたに譲ってさしあげる」
雪だるまの真向かいに立って、温かいコーヒーを飲みます。
「ねえ、あなた、頭の方ばかりめかしこんでらっしゃるけれど身体は寒くはないのかしら?」
自分の身体が温かくなると、ふとそんなことを考えて。
「そうだわ、いいものがあったんだわ」
持っていたバッグから取り出したのは赤と緑のラッピングペーパーと金色のリボン。
掃除の最中に見つけた、廊下に散らばっていたこれらはきっと入院患者の誰かが落としたもの。
もっとも一番大切な中身はそこにはなかったのと、まだキレイだったので、
何かに使えるかもと拾って持って帰って来たものでした。
「ふふ、早速使えるわね」
コーヒーをベンチに一旦置いてから、雪だるまの身体を器用にラッピング。
首には金色の蝶ネクタイ。
「今日もクリスマスみたいよ、雪だるまさん。とってもステキ!!」
サーシャおばさんは「ごきげんよう」と微笑んで、
またコーヒーを手にしてズンドンズンドンと家に帰って行きました。
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