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朝陽が少し高く昇って来た頃、昨日より遅い時間に現れたのはカラス。
この寒さに中々起き上がれなかったカラス、寝床から出てくるのがいつもより遅かったからです。
それでもクリスマスの翌日は絶対に町に行かなければいけません、それは。
――今日はたくさん、町にごちそうが溢れている日!!
カラスはそれを知っていたからです。
嬉しくなって飛び回り町のあちこちに落ちている夕べのご馳走を拾い食べます。
骨のついたお肉の切れ端を頬張り、ミートソースたっぷりのパスタを食べ、
誰かが落としてグシャグシャになってしまったらしいケーキを頬張りました。
お腹いっぱいになったカラスは最後にケーキについていた真っ赤なストロベリーをくわえて飛び立ちました。
――後で食べよう、後で!
喜んでふわりと着地したのはベンチ。
人の気配がしない、と気を許して着地したのに。
隣を見たら奇抜な恰好をした何者かが座っていることに驚いてポロリと口からストロベリーを落としてしまいました。
――ねえ、オマエ、誰?
前に回ってじっくり観察、身動き一つしないその変なものにカラスは近づいてつついてみました。
――雪だ、雪で出来ている、人形?
だけど、どうしたことかその人形には口がないようです。
しばらくカラスはその顔を眺めてから。
ツンツンと本当ならば口があるあたりをつつきました。
ツンツン、ツンツン。
小さな穴が開いたそこに。
くわえてきたストロベリーをグイグイと押し込んでみました。
――オマエに口をやるよ、今日は人間からたくさん食べ物を貰えたからさ。これはオマエにプレゼントだ。
カァッと優しく鳴いたカラスは羽ばたいて、また何かを探しに町に繰り出します。
カラスのクリスマスはまだ続いているようです。
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