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朝陽がすっかり昇った頃、アパートメントから出て来たのは8歳の誕生日を迎えたばかりのレオン。
実はあの雪だるまは、夕べレストランでクリスマスの食事を終えた帰りに、
パパとママと3人で作ったもの。
まだあるだろうか、溶けてしまってはないだろうか、と。
朝食もそこそこに心配になって見に来たのでした。
「えっ?!」
夕べ自分が作った雪だるまではなく、少し趣の違ってしまった雪だるまを見てレオンはもう一度家に戻りました。
慌てて自分の部屋のクローゼットを漁り、
それからまだ朝ご飯を食べていたパパとママの手を引いてもう一度雪だるまの元にやってきました。
「あら、まあ」
ママの口から出た言葉に。
「なんてことだ」
パパも笑いを隠せません。
「寝て起きたらこんなにおしゃれな雪だるまになってたんだよ、どうしてだろう?」
首を傾げるレオンを見て二人は楽しそうに笑っています。
「それでね、パパ、ママ」
「なあに?」
「去年僕が拾った手袋、覚えてる?」
レオンの手にはクローゼットの奥にずっとしまっていた赤い小さな手袋。
「あら、ずっととっておいてたの?」
「うん、誰か小さな子にあげようかなって思って」
とてもキレイな手袋だったので、もったいなくて捨てずにおいたのです。
「この子にあげてもいいかな?」
レオンの言葉にパパとママは顔を見合わせて頷きあってから。
「そうね、この子のためにとっておいたのかもしれないわね?」
「うん、きっとピッタリなんじゃないかな?」
二人の言葉に安心して夕べ刺した枝の腕の先に手袋を優しくはめてあげました。
「本当にピッタリ!! 何だか楽しそう、まだクリスマスみたいだね」
その日、公園のベンチの前は賑やかに笑いあう声が響きました。
たくさんの人が足を止め雪だるまに話しかけていました。
どこかでカラスもカァと鳴いてとっても賑やかで。
人気者になった雪だるまは、翌朝温かくなってしまうまでゆっくりゆっくりと小さくなって。
最後は笑うようにして溶けていったそうです。
【おしまい】
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