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だるまさんがころんだ
天上界の会議室では
夥しい案件と睨めっこしつつ
選ばれし役員神の方々が只今、審査の真っ最中。
A神「あーもう金輪際、他人と比べてアレが足りない
コレが足りない、ナイものねだりのお願いなど断じて〜聞きたくない!」
B神「コレさえあれば〜キミさえいれば〜神様お願いっ、って手に入ったらどうせすぐに飽きんだろ?
んでメルカリに出品すんだろ?」
C神「ワシらが聞き届けたいのはなんていうか〜こう
〜〜っ清らかな願いなのよ?ね?ねー?」
D神「わかるゥ〜そのなんていうかぁ〜心の琴線に触れるぅぅみたいな?」
B・C「その気無かったのに気がついたらそうしちゃってたぁ?みたいな?」
A「ね、ね、コレなんかどう?」
D「ハ〜〜イみんな注目ぅぅ!ズームインっ」
神々は一斉に、PCに映し出されたビジョンを凝視した‥。
そこには、今ここに存在する悲哀をもはや、
上手く隠すこともできない男が一人、公園のベンチに座っていた。
かつて
そこそこの社会的成功を手にしたことも有ったが、
今はもう、遠い昔‥。
そればかりか数年前、最愛の妻に先立たれてからは、当てもなくTV電波も届かない砂漠を歩き回っているような退屈と孤独が、彼をより偏屈な男に変えていった。
ところが
住み慣れた部屋で妻は今日も、
テーブルの向かいの席で小首を傾げて編み物をしている、
「‥初美っ‥帰って来たのか?‥」
ハッと目を覚ますと、その部分だけ切り取られたかのような不在に、胸がシンとする。
辰三は、何度そんな夢を見たことだろう。
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