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「――で? 恋人だというにはあまりにも俺の事放置しすぎじゃないか?」
俺の部屋に場所を移し、リビングで正座をさせ問い詰める。
「すみませんでした! 俺、一年前アメリカ行きの話を聞いてこれはチャンスだって思ったんです! そりゃ仕事の事もですが拠点をむこうに移して先輩と結婚しようと思って。むこうじゃ州によって同性婚認められてますからね。でもそれにはちゃんと仕事を頑張って先輩をお迎えできるようにしないとって、この一年死に物狂いで働きました。それでようやくなんとか形になったのでお迎えに来たわけですが……」
ちらりと伺うように俺を見る。
こいつ今、大事なことをさらっと言わなかったか?
結婚? 結婚って言ったか?
「俺に言ってくれればよかったじゃないか」
「先輩に無理はさせられません……」
そう言う琉斗の頬は少しコケていて目の下にもクマがあった。
相談してくれ、とか一緒に頑張りたかった、とか色々言いたい事は沢山あったけどそれを見て俺は、全て許そうと思った。
そっと琉斗の頬に指を滑らせた。
「先輩……」
「俺もさ、もう恋人は嫌なんだ」
「――――え……」
泣きそうな顔になる琉斗。
俺はそんな琉斗を安心させるように手を取り、その指先に唇を寄せた。
「恋人なんかじゃもう我慢できないんだ。お前と家族になりたい」
「それって……」
「結婚しよう。琉斗」
「はい! ……はい! 先輩!」
「先輩はおかしいだろう?」
「――源二郎……さん」
「ふふ」
その後俺たちはアメリカに渡り、家族になった。
-終-
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