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 約束通り会社帰りに木村と飲みに行き、俺は酔いつぶれてしまった。  色んな事がつらすぎたのだ。  吐き出す事もなくただ蓄積されていく寂しさ、つらさ。  木村にタクシーで俺の家まで送ってもらった。 「大丈夫ですか? 先輩、おうちはもうすぐですよ。歩けますか?」  タクシーを降りて、俺を支えながらアパートの俺の部屋の前まで来た。  すると木村は、支えていた俺を抱き込むように体勢を変えた。 「あの、先輩……僕、僕……先輩の事が……」  木村の顔がワンコから狼に変わったように見えた。  恐怖に身がすくむ。 「はい、スト――ップ。誰だか知らないけどご苦労さん。あとは俺がやるからもう帰って?」  木村から誰かが俺をうばいとる。 「は? 誰だよあんた」  木村の顔は怖いままだ。 「俺は先輩の……源二郎の恋人だ。だからお前の入る隙なんか少しもない」  恐る恐る俺を抱きしめる男の顔を見ると確かに琉斗で。  アメリカにいるはずの琉斗で。  俺を捨てたはずの琉斗で。 「ど……して」  声が震える。 「先輩、その人本当に先輩の恋人なんですか?」  まだ諦めきれないと食い下がる木村。 「ん、いや、えーと……その……分からん」 「え? せんぱぁーいぃ……」  へにょりと眉を下げ涙目になる琉斗。 「ほらほら、先輩は僕がこれからものにするんですから、お前が消えろよ!」 「いやいやいやいやいやいや、待って? ねぇ? 先輩? 俺たち恋人でしょう? そりゃ時間かかったのは申し訳ないですが……俺もいっぱいいっぱいで、これでも早かった方なんですよ? ねぇ? 許してくださいぃ」  イケメンなのに慌てる姿がおかしくて、なんだか少しだけ安心した。 「お座りっ」  突然の俺の命令に「わんっ」と座ったのは琉斗のみ。  木村は呆然と俺たち二人を見ていた。 「まぁ、こういう事だな。木村悪い。俺はお前の気持ちには応えられない。こいつだけで手いっぱいだわ」  片目をつぶり口角を上げた。 「――分かりました」  ぺこりと頭を下げ木村は帰って行った。 「琉斗、きちんと説明してくれるんだろうな?」  木村を見送ると、俺は琉斗を睨みつけた。 「はい……」  俺がとてつもなく怒っていると理解してワンコ座りのまましゅんとなる。
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