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最近の俺は考えている事がある。
後輩でワンコな霧島 琉斗と付き合いだして早一年。
そろそろ一緒に住んでもいいかなぁと思っているのだ。
琉斗は猫を飼っているので主に琉斗の部屋で過ごし、週末は泊まる事も多い。
だからもう少し大きなところにふたりで住む方が経済的にもいいと思う。
まぁ本音としてはもっと一緒にいたい。という事だ。
いつものように朝、会社の最寄り駅で出てきた俺をみつけた琉斗が走り寄って来た。
「せーんぱいっ、考え事ですか?」
「あ、いや。こないだのコンペの事考えてた」
「あーあれはちょっと厳しめでしたねー。途中までいい線いってたと思うんですがライバル会社のあの提案は反則ですよねー」
「んー反則ではないんだろうけど、まぁうちとしては厳しいな」
いつも通りの朝、いつも通りの会話。
いつも通りの琉斗の笑顔。
やっぱり俺はこいつの事が、好きだなぁ……。
しみじみと思う。
今度一緒に暮らそうって言ってみようかなぁ。
「あ、そうだ先輩。俺来月からアメリカに行くことになりました」
「――は? 出張か?」
聞いてないけど。
「いえ、転勤です。大きなプロジェクトの立ち上げメンバーに選ばれたんです。準備も色々あってしばらく先輩と会えなくなるかもしれませんが、俺頑張るんで応援してください!」
は? こんな朝の通勤中に言う事か?
アメリカだぞ? 会いたいって思ってもすぐには会えないんだぞ?
何でお前はそんな平気な顔していられるんだ。
そりゃお前にとってビッグチャンスだけど……。
俺は素直に喜ぶ気持ちにはなれなかった。
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