隣人はあの有名アイドル!?

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隣人はあの有名アイドル!?

「あの…これ……」 「もしかして、みました?」 「…ごめん、そんなつもりなくて…」 イケメンの隣人と気まづくなった。この時の俺は、浮かれていたんだ。それが全ての原因だった。 なんで、入らないでと言われた部屋に俺が入ってしまったかというと、それは数日前に遡る。 ・ ・ ・ 今日もだ。日に日に音に敏感になっている俺は“その音“を明確にとらえるようになっていた。 俺が止まると止まり、歩くとまた“その音“もなりだす。最近は毎日と言っていいほどこの音が後ろからきこえる。 音だけではない、感覚も敏感になっている。ここまできたら、警戒しない人がいるだろうか。 この嫌なくらいに俺を見てくる“視線“を俺は“その音“と共に感じていた。 ストーカーだ。 いつからかは覚えてないが、もう大分経つ。男がストーカーされるなんておかしな話だよな、俺もそう思う。 最初は勘違いかと思ったが、こうも続かれるとそう思わざるを得ない。 とりあえず俺はいつものように人目の沢山ある大通りへと出た。そうすると、“音“と“視線“は消える。 俺は安堵のため息を零し、いつものように会社へ出勤した。 ・ 「咲間さんは知ってます?」 「ああ、テレビでなら、確か名前は…」 同僚の女性にスマホ画面を向けられ覗き込むと、そこにはとびきりのイケメンがいた。最近よくテレビやドラマに出ているアイドルだ。 「(すめらぎ)逸喜(いつき)くん!このルックスにあの声……皇くんみたいな王子様が現れないかなぁ」 女性を今虜にしているその皇逸喜とやらは今では街で見かけないことはない。広告にも引っ張りだこで見飽きた程。 このカメラに向かって綺麗に笑うこの皇逸喜は俺より年下で、現役高校生らしい。こりゃまた人気が出そうだ。 もう20歳すぎのおじさんな俺より大人の裏事情がわかっていそうだ。今の高校生ときたら怖いな。 そんなことを考えている間に昼休憩は終わり、俺はまた作業に戻った。 ・ ・ 「お先失礼します」 「咲間くん、本当に大丈夫か?」 「はい、大丈夫です」 上司に声をかけられ、咄嗟に俺は頷いた。この上司はとてもいい人で、俺が今ストーカーされているということを相談したら定時に帰れと言ってくれた。 夜道が暗いと危険だからそうだ。まるで女みたいな扱いをされて少々胸が痛む。 「気をつけて。何をしてくるか、何が目的なのかわかないから」 「ありがとうございます。では…」 そんなことを言われたら余計に怖くなる。 会社を出て、駅へ行き、電車に乗って、最寄りで降りる。最寄りで降りると、“その音“はきこえだした。 いつもは気にせず家へ帰っていたが、今日はいつもと時間帯も違う。なのに音がきこえるということは、駅でそんなに前の時間から待ち伏せているということなのか? 少し怖くなり、俺は振り返った。 この道は人気も少ない。あるのは電柱だけ、曲がり角は近くない。これなら今道を戻ればストーカーを捕まえられるかもしれない。 絶好のチャンス。 そう思うと俺は恐怖なんて吹き飛び早歩きで電柱へと向かって走った。 「!?」 電柱から影が出てきて、俺はそれとぶつかった。ぶつかった怪しい男の腕をつかみ、絶対逃がさんとした。 「あの」 キャップを深く被った男の顔はみえないが、焦っているのはわかった。 「後、つけてますよね」 問いかけても男から反応はない。男は俺よりすらっと身長が高く、少し怯みそうになったが、ここまで来たら引き下がるわけにも行かなかった。 「………っ」 男に腕を振り払われ、俺は呆気なく男を逃がしてしまった。男は走り去っていく。あまりに突然の出来事で、俺は男を追うことが出来なかった。 …帰るか。 そういえば、今日は隣の空き部屋に誰かが越してきたんだっけ。 挨拶いかないと。
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