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「千晃さん!」
嬉しそうに帰ってきたのは高そうなカメラを持った皇逸喜。
「あの、そこに立ってください…そう、そのままカメラ目線で…」
「やっぱり恥ずかしいからやめにしないか?」
「だめです、1枚だけでいいので!」
熱心にカメラを覗き込む国宝級イケメンをみて余計に顔に熱が集中する。でも1度許可したのを今更だめと言う訳にもいかず、俺は撮られることにした。
パシャッ…
撮った写真を見せてもらうと、そこには苦笑いでカメラをみる俺が写っていた。なんともかっこ悪い。
「本当にこんなんで良かったのか?」
「こんなんなんてとんでもない……部屋中に飾りたいくらい最高です」
「君にそう言われると変な気分になるからやめてくれよ」
こんなイケメンに言われるとどんどん恥ずかしくなる。公開処刑だ…。
「…どんな気分ですか?」
そう俺の方に近寄ってきて俺を真っ直ぐとみる皇逸喜。まるで時間が止まったように、男は俺を見る。真っ直ぐ、じっと、逸らすことなく。
「……いいから、ほら作業やろう」
俺は耐えられなくて皇逸喜の横を通り過ぎてダンボールを開けていく。
「…はい、あ、そこのは自分でやります。千晃さんはこっちのを」
「あぁ…」
それからは話すこともなく、彼は自分の部屋の整理、俺はリビングの整理をした。
「皇くんこっち終わったよ」
「待ってこっち来ないでください!」
部屋を覗こうとしたら慌てた声がきこえてドアは閉められた。しばらくしてドアが開くと、皇くんの顔は青ざめていた。
「大丈夫か?」
「は、はい、すみません。あの、俺の部屋には入らないでください、他ならいいので…」
「お、おう」
「それで、終わったんでしたっけ。じゃあ、えと、そうだな…」
そう慌てている皇くんに追い討ちをかけるように電話が入ってきた。
「はい。千晃さん、ちょっと失礼します」
そう言うと皇くんは電話をしながら外へと出ていってしまった。俺はリビングの椅子に腰掛けて彼を待つことにした。
だがその後、彼の自室から着信音がした。ピリリリと何度も流れ一旦途切れたものの、それはまた鳴り出した。
電話の主に彼が今出られないことを伝え、彼に伝えるべき要件をきくべきだろうと、馬鹿な俺はそう思い彼の自室のドアノブに手をかけた。
『待ってこっち来ないでください!』
『あの、俺の部屋には入らないでください、他ならいいので…』
あれほど彼が入るのを嫌がっていたこの部屋、本当に入っていいのだろうか。
そう考える間も、ずっとなり続ける着信音、それが俺を急かすようになり続ける。
しょうがない、よな。
俺はドアノブを捻り、扉を開けた。そして部屋の灯りをつけた。
「こ、れは……」
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