シーン4

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シーン4

夕方の東京秋葉原、電気街のメインストリートの歩道 途方に暮れた感じの私服姿の毬夏 毬夏「ここがあの有名な秋葉原か。もうここしか望みがないもんね」 毬夏の回想映像 ドラッグストアで何軒も「売り切れ」を店員に告げられる 毬夏「マスクだけじゃなくて体温計まで売り切れとはねえ。電気街っていうくらいだから、ここなら何とか」 毬夏、ビルが丸ごと量販店になっている「ドヤバシカメラ」に入る 様々な売り場を歩き回り、「体温計」の札が下がっているコーナーにやっとたどり着く 商品の棚はほとんど空 一か所だけ「在庫あり」の棚を見つけるが値段を見て顔がひきつる 毬夏「は、八千円! いやこれはちょっと」 近くを通りかかった店員を見つけ 毬夏「あの、すいません」 店員「はい、何かお探しですか?」 毬夏「あのもっと安い体温計はありませんか?」 店員「ああ、その棚の以外は売り切れですね。そのタイプなら、ウズラの卵ぐらいの大きさで、おでこに当てるだけで測れる機種ですから、お勧めですよ」 毬夏「あの、ちょっと値段が。安いのはいつ頃入荷します?」 店員「3か月は先になると思いますよ。体温計は日本中で品不足らしいんで」 毬夏「さ、三か月! 仕方ない。すいません、これ下さい」 再び秋葉原電気街の歩道 ハンドバッグを肘から下げ、秋葉原駅入り口に向かって歩く毬夏 スマホの家計簿アプリの画面を見て、くるりと向きを変える 毬夏「予想外の出費したから、上野まで歩こう。節約しないと来月と言わず、今月中に破産だわ」 電気街の歩道でビラ配りをする大勢のメイドカフェの店員が毬夏の目に入る 毬夏「うわあ、すごい数。制服が違うって事は、あれだけたくさんあるのね、メイド喫茶とかいうの。この秋葉原だけでいったいいくつあるんだろ」 毬夏、スマホに保存してある求人広告を見る。 毬夏「ああいうお店なら時給はOKなんだけど……」 毬夏、ビラ配りをしている、形も色も様々な店員たちをじっと見る 毬夏「みんな制服だけじゃなくて、顔も可愛いなあ、スタイルもいいし。あたしには無理だよなあ」 毬夏、メインストリートを避けて一本横の小さな通りに移動 毬夏「こりゃ女のあたしにも目の毒だわ」 やや古い低層ビルが並ぶ通りには、さらに多くのメイドカフェ店員が数メートル置きにずらりと並んでやはりビラ配りをしている メイドA「メイドカフェいかがですかあ?」 メイドB「今ならすぐにお席案内できますよ」 忍者のような装束のメイド「忍者カフェはいかがでござるか?」 毬夏「ありゃ、こっちも大勢。しょうがない、さっさと通り抜けよう」 メイドたちの間を歩きながら 毬夏「でもまあ、ああいう可愛い服着て、モエモエキューンとか言ってればお金もらえるんだから、最悪の場合、このバイトも考えるかな。いや、でも」 毬夏の脳内映像のシルエット 二人掛けのソファに男性、横にはべるメイド メイドが男性に肩を抱かれている 毬夏「いや、そこまで落ちたくない……でも収入はなんとかしないといけないし」 再びスマホを見ながら歩く毬夏。ビルの入り口からポシェットを肩から斜めにかけ、マスクをしたメイドが出て来る。そのままぶつかる二人。毬夏、後ろ向きにひっくり返りそうになり、地面に尻もちをつく。 ピピ「きゃ! ごめんなさい。大丈夫ですか?」 毬夏「いえ、こちらこそ、すみません!」 ピピが毬夏の手を取って助け起こす。ピピを見ながら 毬夏モノローグ 「うわあ、顔もスタイルも抜群。でも、この制服、可愛いけどそんなに派手じゃない。わりとおとなしめの店なのかも」 ピピ「よかった、大丈夫そうですね。ああ、よかったら一度うちに来てね」 ピピが名詞サイズのビラを毬夏に渡す。その表面にはカラフルな模様と丸っこい文字で「スイート・サワー・レシピ」という店名 ピピ「じゃあ、気を付けて」 毬夏「あ、あの、すいません!」 ピピ振り返りながら「はい? 何か?」 毬夏「あの、このお店、アルバイトを募集してたりしますか?」
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