それ、頭のネジだよ

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「なッ!?」 「……」 「どうしたの?」 「誰もいねェんだ」 そんなはずはない。あの放送室はどの部屋にも繋がっていない個室なんだから。 「机の下とかちゃんと見た?」 目の前で起こるありえない出来事を否定するためにキョウタに問いかける。 キョウタはかがみ込んで子供が隠れられそうな机の下や椅子の下、引き出しの中を探すがどこにも子供の姿は見当たらない。 『探してもムダだよ』 またあどけない声が、がらんとした体育館に響く。俺はそこに誰もいないのかと2人にアイコンタクトを取るが、返ってきた答えは沈黙だった。 『どう?びっくりした?』 少年はいたずらが成功したような弾む声音で話す。しかし俺達はこの場の異様な雰囲気に怯えてお互いを勇気づけるように目を合わすことしかできなかった。 『そんなに怖がることはないよ。別に君たちになにかしようってわけじゃないんだ。むしろ君達のために忠告してあげるんだから感謝してほしいくらいだね』 おどけたような口調で少年は話を進めるが、もちろんこっちは楽しい気分になれるわけがない。こちらの心中なんてお構いなく少年は話し続ける。 『ジーパンの君がさっき蹴ったそのネジ、それ君たちの中の誰かの頭のネジだから』 「何を言ってるんだ。幽霊か何か知らんが冗談もたいがいにしてくれ!」 キョウタがスピーカーの音量に負けじと声を張り上げて叫ぶ。だがその声はわずかに震えていた。 『はぁ〜せっかく君たちのために言ってあげてるのに。ボクのこと信じられないの?』 「当たり前だロ!」 キョウタに続いてイクオもスピーカーに向かって叫ぶ。声の主は少し悩むように時間を置いてから答えた。 『ステージの近くにいる君』 「俺?」 『そう、君だ。そのネジを拾って頭に挿してみなよ』 少年は俺を指名し、ネジを頭に挿すように命令した。俺はそんな突拍子もないことやりたくないと思いながらも、足元に落ちているネジを右手でつまんで持ち、つむじの上まで持っていく。 『さあ、挿してみてよ』 放送室の前から2人も固唾を飲んで見守る。俺は、一瞬ためらったがどうにでもなれと勢いよくネジを頭頂に振り下ろし、襲ってくるであろう痛みに備えて目をギュっと瞑る。 しかし、いつになっても痛みを感じないのでおそるおそる右手で自分の頭を撫でてみると、頭のてっぺんからネジが。 「うわっ!!」 自分の手に伝わってきた感覚が信じられず、反射的に汚いものを触ったときのように右手をブンブン振る。本当にネジがのか? 「おい、頭下げろ」 キョウタとイクオが駆け寄ってきて俺の頭頂部を確認する。
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