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「本当に挿さってるヨ……」
「これ取れんのか?」
『ネジが挿さった本人以外の人が触れば取れるよ〜。逆に1分そのままにしておくと、挿さってる人の頭の中に入って取れなくなるから注意だよっ!』
声の主は突然、なにやら楽しそうにルールのようなものを説明し始めた。彼の言葉が本当なら、2人のどっちかが触ればこれは抜けるのか。
「ユウキ、触るぞ」
キョウタも同じことを考えていたようで俺のつむじへと手を伸ばし、ちょんとネジに触れる。
すると3分の2まで近くまで埋まっていたネジは不自然なほど簡単にぽろっと取れて、キョウタの手の中に収まった。
「スッゲ……」
イクオがそれを見て感嘆の声を漏らす。
『信じてもらえたかな?それが頭のネジだって』
「「「……」」」
俺達3人は揃ってキョウタの手のひらの上にある少し大きめのネジを穴があくほどじっと見つめる。最初にネジから目線を切ったのは俺だった。2人に倣いスピーカーに向かって話す。
「このネジをどうすればいいんだ!」
『さあ?それをどうするかは君たちの自由だよ』
「頭のネジってなんなんだよ、もっと具体的に言えよ!」
俺の質問に対する少年のあいまいな答えにイラついたようにイクオが問いかける。すると少年はやや呆れたように言った。
『君たち人間ってほんとわがままだよね。何でも自分の思い通りになると思ってる。けど、いいよ。説明してあげる』
仕方ないなぁーみたいな雰囲気を出して面倒くさそうに話す、自分は人間ではないような口ぶりのスピーカーの向こうの存在の言葉を俺達はただただ黙って聞く。
『その頭のネジはやっていいことと駄目なことの区別をするもの。倫理観と言ってもいいかな。それが形になったものさ。君らの中の誰か1人が何かの拍子に落としたから、早く落とした人の頭につけ直したほうがいいよ。あ〜そうそう、30分経つと取り付け不可になるから気を付けてね。
……はい説明終わり!では、諸君の健闘を祈る!』
明るい声のトーンで最後に冗談を挟んでブツッと放送は途切れた。
俺達はしばらくフリーズしていたが、30分という制限時間を思い出し、相談を始める。
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