それ、頭のネジだよ

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「つまり俺達のうちの誰か1人がこれを落としたから、30分以内にこのネジをつけて倫理観を戻せって?」 「そうだろう」 「今の時間は?」 「4時半ちょうどだ」 尻ポケットからスマホを出してキョウタが答える。ということはタイムリミットは5時か。 「早くネジを落とした奴を見つけないとね」 「おいおい、あんな得体の知れない奴の言う事信じるのカヨ!」 イクオが大げさな身ぶりで反対の意を示す。 「じゃあ、イクオもつけてみる?」 「い、いや……いいヨ」 「じゃあさっさと持ち主探そうよ」 「あ、アア」 口では反対したもののイクオはあっさりと折れてくれた。さすがのイクオもこんな得体の知れないものを頭につけるのは怖いらしい。 「で、どうやって探せばいいんだろ」 「ウーン……」 俺とイクオは揃って悩む。当てずっぽうでやるわけにもいかないしどうしよう。するとキョウタが何か思いついたようで話し始める。 「逆に言えば今ネジを落としてる奴は倫理観がないってことだろ?それを使えばいいんじゃねえか?」 「キョウタ冴えてるね!」 「だろ?」 これはなかなかの名案かもしれない。これならすぐに見つかるだろう。 「で、それをどうやって確かめンだよ」 「あー……」 5分ぐらい考えたが確かめる方法を3人とも思いつかずに早くも行き詰まってしまった。だいたい倫理観なんてあいまいなものどうやって確かめればいいんだよ。 それでも俺が諦めずに倫理観を確かめる方法を考えていると、イクオが自身有りげな顔で口を開いた。 「最初にネジが落ちてたのはキョウタの足元だったよナ?」 「ああ」 「ならキョウタが落としたンじゃねえの?」 確かに、難しく考えすぎていたのかもしれない。思えばあの少年が話しかけてきたのもキョウタがネジを蹴飛ばした時だった。 3人の中の誰かと言ったのはあいつのおふざけで、キョウタのことを思って『雑に扱わない方がいい』と言ったのかもしれない。 「どう思う、キョウタ」 キョウタの方を見て問いかけると、キョウタは腕組みをして、3人の中心に置いたネジをじっと見て言った。 「俺じゃないと思う」 「なんでだヨ」 「今、やっちゃいけないことが何かを考えて、お母さんが作った晩ごはんを残すって想像してみたけど俺には出来なさそうだった」 「小学生かヨ」
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