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俺もとりあえず立ち上がってキョウタとイクオの待つフリースロー地点に歩いていく。
ネジがなくなってしまったからキョウタのお年玉を盗んだのか?
いや、でもネジが落ちてからイクオはキョウタの財布が置いてあるステージには近づいてない。それは俺が見てた。
じゃあイクオがキョウタの金を盗んだのはネジが外れる前?
ふいにあの少年の言っていたことを思い出した。『何かの拍子に落とした』。
イクオが金を盗んだ時に落としたってことか!?
「始めるか。順番はどうする?」
「ついた順でいいだロ。キョウタ、俺、ユウキ。ユウキいいよナ?」
「あ、うん。いいよ」
こっちはそれどころじゃないが、イクオに考え事を悟られないように普通に振る舞う。
本当にイクオがキョウタの金を盗んだのか……?でもイクオは悪賢いけどそんなことをする奴じゃない。じゃああの封筒は?
思考が堂々巡りする。
その間にキョウタはシュートを決めて、ボールをイクオに渡す。
待てよ。イクオはそのネジの持ち主は自分だって分かってるはずなのに、なんで名乗り出ないんだ?もしかして、もうこのネジなんていらないから?
イクオのシュートしたボールは、枠を大きく上に外れゴール裏に落ちる。
「力が入りすぎちまったナ」
そうだとしたらイクオの行動全てに説明がつく。
俺が軽い気持ちでイクオにネジを付けてみるかと聞いた時あんなにビビっていたのは、万が一俺とキョウタが悪ふざけしてネジに触らなかったら自分では取れないから。
ネジを付ける人を決める方法を運で決まるじゃんけんじゃなく、フリースローにしたのもわざと負けるため。
実際、今の的外れなシュートも運動神経のいい普段のイクオならありえない。
俺はこの手の中にあるネジをどうすればいいんだ?
「ユウキの番だぞ」
「うん」
俺のシュートは乱れる俺の気持ちとは裏腹に、キレイな放物線を描いてリングに吸い込まれた。「やるな」と何も知らないキョウタがシュートを褒め、俺はキョウタにボールをパスする。
もう、迷っている時間はそんなにない。選択肢は2つに1つだ。イクオにネジを挿すか、挿さないか。
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