献花

5/7
前へ
/512ページ
次へ
 あらかたの祈りが終わるのを見届けると、レギアスが私にハンカチを持たせて肩を抱き、ゆっくりと皇主の席まで誘導して歩きだす。 「ありがとう……」 「大丈夫?」 「ええ、でも私、大失敗しちゃったわ……皇主としての最初の公務が……」 「いやあ、かなりいい演出になったと思うよ」 「そう思う? ……良かった」  二人並んで座り、レギアスにもたれながらひと安心していると、透明になった花びらが少しずつ戻ってくる。  私への敵意や邪心などが一定以上あると祝福は施されないのだが、今回は刺客探しのために報告に戻ってくるように設定していた。  対象の感情が流れ込んでくるわけではないけれど、数が増えると精神的に厳しい。  まあ普段から祝福の印がないものは処理してあるから大丈夫だろう。  アンサリムにはセレスティア神を崇める国教(レスタ)があり絶対的な権力を持っている。  左手の甲に花びらの刻印が無いものは教団施設に連れて行かれ、自白魔術をかけられたのち説得や洗脳のうえ国外追放されることもあるらしい。  おかげで治安が保たれているのだけれど、我が国の最大の闇というか必要悪というか。  しかも実質現教団トップの大神官は従兄のサラディール。いかにも聖職者な優しげな顔で……  人は見かけによらないと思い知らされるこの事実を知った時はショックだった。  ちなみに名目上の教団トップの教皇は皇主だから今は私のはずだ。
/512ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加