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な、何!?
体がグングン上空に上がっていく。目に入るのは慌てる兵たちと地面ばかりで、事態が把握できない。しかも恐ろしい速度で戦場から離れていく。
誰かが私の腰に腕を回しているようだけど、確認しようにも体勢が苦しくてできない。
混乱しながらもどうやって逃げ出そうかと周りをできる限り見回すと、顔にかかるプラチナブロンドの隙間から黒いドラゴンが高速でこちらに飛行してくるのが見えた。
ドラゴンの上に騎士? ということはソーマ王国の竜騎士!? もしかして私を拐っているのも??
ソーマ王国は隣の大陸にある、世界で唯一ドラゴンが群れで棲む土地だ。一騎当千の竜騎士を千人以上も抱える傭兵の国だけれど、こちらの大陸で同盟を結んでいるのは我が国だけ。
この大陸では空を飛ぶ敵を想定することなど滅多にないのが現状だった。
黒い竜騎士はみるみるうちに接近すると、すぐ上でドンッと音がし、私をつかむ腕が外れた。
落ちる!!
恐怖しながらも結界術をなんとか発動しようとした瞬間、男に抱えられ黒いドラゴンの上に乗せられた。
その男の発する禍々しい魔力と殺気に戦慄し、体が硬直して声も出ない。
私を乗せたドラゴンはそのまま逃げていくドラゴンに追いつき、私を左手に抱えた黒い騎士服の男が槍を軽くひと薙ぎする。
私を拐ったと思われるドラゴンの上の男の首が胴から離れ、大量の血が噴き出した。
こ、この竜騎士は私を助けてくれたの? それとも、獲物の奪い合いをしているの?
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