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「雪だぁっ!」
とはしゃぐ子供たちの声で目が覚めた。
もそもそと布団から身を出し、机の上の眼鏡を取る。
窓の外を見るとどんよりした雲。
階下を見ると、アパートの住人の子供たち(と思われる)がきゃあきゃあ言いながら、草の上に乗った霜をかき集めていた。
道路の上は白い雪ではなく、普段のアスファルト。
そうか、ここはめったに雪が降らないのか。
近くの浜まで散歩する。
遠くに山が見える砂浜しかない静かな浜。
ほのかな潮の匂いがするこの場所には、釣り人がちらほらいるだけだった。
伸びをする。
佐伯さんなら、どのような表情をしてこの景色を見るのだろう。
いや、生まれも育ちもここだと言っていたのだから、この景色も見慣れているはずだ。
・・・どうして佐伯さんなんだ?
どうして彼女を思い出すんだ?
どうして、あの子の顔が見たいのか。
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