蒼い恋慕

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1月 きんと冷えるのは夜空 満天は星 自転車の後ろに乗る。 遥か遠くの頭上にはピンクや黄色の星たちが瞬いている。 「星が綺麗だね。」 「何万光年前の光だろう。」 「果てしないね。」 「こんなに果てが無いと、私たちの悩みなんてちっぽけだと思っちゃうね。」 友達と過ごす時間は愛おしい。 嫌なことも寂しいことも笑って吹き飛ばす。 心強い存在。 そしてちょっと離れた場所から笑顔いっぱいにはしゃぎ合う友人達を見ていたい。 この一瞬は、今だけのもの。 この先にはもうない、今だけのもの。 夜空に向かって左腕を広げた。 願い事をする性質ではない。 でもなんだか今日はロマンティックな気分に浸りたい。 ふ~っと自分の左手に息を吹きかける。 魔法が使えたら楽しいのに。 私はその魔法を使って、あなたに綺麗な星々を届けたい。 あなたを思い出すと、胸の中にぽっとオレンジ色の炎が灯る。 その明かりは温かく、わたしはいつまでもその炎に包まれていたいと願う。 そしてハタと気付く。 私らしくない、と。 恥ずかしい。 別に誰も私の片思いを知らないのに。 悪いことじゃないのに。 あなたの笑顔、あなたの横顔を思い出す。 それから丁寧に消しゴムであなたを消してゆく。 あなたの顔が消えていく。 それで良い。 それで良いの。 きんと冷える夜空に負けないよう、私もしゃんと背筋を伸ばしてみた。
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