蒼い恋慕

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ここは暖かい。陽気な日が多い。 太平洋に面しているからだろうか。 「ここ、どう思いますか?」 田中さんから声を掛けられた。 「あ、そうだね。ここは・・・」 反射的に笑顔で応える。 もう笑顔は癖になっている。 誰にも自分を悟られたくないから、笑顔は良い武器になる。 笑顔ですべて隠せる。 と思っていたけど、佐伯さんの笑顔は違う。 包み込むような笑顔、嬉しさを爆発させたときの笑顔、社交的な笑顔。 あの子は不思議な子だ。 不思議だから、顔を見ることが怖かった。 声が耳に入ると、自然に動きが止まってしまった。 いま、どんな顔をして話しているんだろうか。
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