蒼い恋慕

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雨が続く。 洗濯物が乾かないとよく聞くが、洗濯乾燥機にかければ済むことだ。 と思う。 「豊田さん」 佐伯さんが微笑んでいた。 「佐伯さん、どうかしましたか。」 今の悩みを打ち明けてくれた。 客観的にどう思うかと、アドバイスを求められた。 真剣な目。笑顔すらないきゅっと結ばれた口元。 時にふわりとした笑顔。 痛い視線。息をのむときに開く口。 この子は万華鏡のようにくるくると表情を変えてくる。 面白い子だ。 気付けば二時間も話し込んでいた。 雨雲が厚く立ち込めているせいか、街灯が光る。 彼女はにっこり笑って立ち上がった。 「さようなら、また明日。」 慌てて席を立つ。 「さようなら、そうですね、また明日。」 お互い微笑んで、背を向けて別れた。
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