蒼い恋慕

16/27
前へ
/27ページ
次へ
暑い。盆地でもない場所なのになぜこんなに暑いのか。 暑さに負けず今日は館内がやかましい。 女性陣が浴衣を着ているためだ。 確かに華やかだ。 華やかだけど行動が制限され動けない分、自分たちが動かなければならない。 その時左腕に暖かいものが触れた。 見ると笑顔満面の佐伯さんがいた。 「おっ」 黄色い浴衣には大きなヒマワリがたくさん描かれていた。 佐伯さんのような明るいヒマワリ。 そうか、もう夏なのか・・・。 「こんにちは。」 「こんにちは。」 「暑いですね。」 「そうですね。もうこんな季節なんですね。」 会釈し合い別れた。 何故か今日は雰囲気が違っているような気がした。 そっと彼女の後姿を見ると、髪を上げていた。 そうか。 左腕がじりじりと焼ける。 佐伯さんが触れた場所はより熱を帯びていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加