蒼い恋慕

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今日はホールで大掛かりな作業がある。 10月と言えど、夜は涼しくなるので薄いジャンパーを羽織った。 ぐるっと周りを見渡す。 佐伯さんの姿はない。 たくさんの人があちらこちらで作業をしている。 様子を見回りに行かなければならない。 一つのグループの輪に近づく。 「どうですか?進んでいますか?」 「おっ!豊田さ~ん!」 そのまま輪の中に強引に入れられ計画書を手渡された。 大きな声で笑い話す彼らに引き込まれている中、 「おっ!買い出し班が戻ってきたぞ。」 という声で振り返ったその集団に佐伯さんがいた。 鼻の先と頬が少し赤い。 寒いのだろうか。風邪はひかないだろうか。 その時、佐伯さんがこちらを見た。 目が合う。 目の中が潤んだ気がした。 どうしよう。目が離せない。 そのまま強引に首を戻す。 何だろう、これは。
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