蒼い恋慕

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5月 外に出ると街中花の匂い 一年で一番好きな季節。 坂道を降りながら、私は爽やかな風に包まれた。 鼻先をくすぐる甘い香り。 伸びをする。 心地よい風が私の喉元を過ぎていった。 きっと今日も良い一日になる。 女性と楽しそうに話すあなたを見た。 お互いニコニコと微笑み合って話していた。 良い雰囲気だな。 ああ、あなたも普通の人間なんだ、と思うと少しほっとした。 私の前ではいつも顔が強張っている、気がする。 私が話し掛けると、いつも一拍置いて返事をする。 変な人。 それが私のあなたへの印象。 もしかしたら楽しそうに話すあの女性が好きなのかもしれない。 微笑ましいな。 見守りたいね。 楽しそう。 好きな人がいるって、きっと楽しいんだろうな。 恋をすると、どんな景色が見えるのだろう。 私はなんだか楽しくなって、ついスキップ宜しく右足を軽く上げてしまった。 ・・・ 私は、見たいのか? その恋のフィルターがかかった景色を見たいのだろうか? 恋をしてしまう自分を想像しようとしてみたが、わざわざする事でもない。 くだらない。 私は歩き出す。 私は変わらない毎日。 それでも毎日が楽しい。 これからもこんな毎日がずっと続く。 平凡だけど、普通に過ごせる毎日。 花の香りを感じ、陽気な天気に心が躍る。 それが幸せ。 今が幸せ。
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