蒼い恋慕

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もうすぐこことはお別れになる。 今のうちにたくさんの人たちと話をしておこう。 ここは過ごしやすかった。 明るい人が多かった。 みんな好き勝手によく喋る、元気。 独特な方便さえも、今は愛おしい。 もっとみんなと交流を図るべきだったな。 これは、次の課題としよう。 気が付けば佐伯さんを目で探していた。 彼女は頭をお団子にして、マフラーを何重も巻いていた。 目の下まですっぽりマフラーで隠していても、彼女が笑顔なことだけは解った。 話したいのに、話せなかった。 そもそも彼女に話す要件が無かったし、何を話せばよいかも分からなかった。 話し掛けたら、迷惑がられるかもしれないし。 夏、彼女に触られた左腕をそっと触ってみる。 でも彼女とももうお別れだ。
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