蒼い恋慕

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雪。 こんな時期に。 きっと山に積もった雪が流れてくるんだろう。 「豊田さん。」 佐伯さんに呼び止められた。 今、この場所には二人しかいない。 佐伯さんの方へ居直すが、どうすればいいのか、何を言えばいいのか分からず、ずっと俯くしかなかった。 その時、左腕が強く掴まれた。 彼女は困った時に見せる眉を下げた表情で、じっと顔をのぞき込んでいた。 ありがとう。 心にともしびをつけてくれたあなたは最高な人。 高い鼻筋も。 綺麗な指も。 おしゃれな靴も。 あなたの笑顔も。 声も。 ひとつ、ひとつ。 あなたの笑顔でたくさんの人がきっと励まされる。 あなたの笑顔でたくさんの人がきっと癒される。 私はあなたの事を。 ・・・・・ずっとお慕いしておりました。 そう聞こえた気がした。 気付けばそっと人差し指で佐伯さんの頬を撫でた。 触りたい、抱きしめたい。 けれど無理だ。さようなら。 そのまま背を向けた。 佐伯さん、気分を悪くしただろう。 でも、反省する気になれなかった。 白く痛い思いが込み上げる はらはらと落ちる白い雪が、まつげにそっと降りた。 ほろり これは涙ではなく、雪。 はらはらと落ちる雪。
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