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7月
涼しい館内
クーラーの効いた部屋は、少しカビの匂いがする。
このカビは誰が取るんだろう・・・。
私たちの知らないところで業者さんが来ているのだろうか。
私は仲間たちと浴衣を着ていた。
浴衣を着て髪型もお団子にしたりアップにしたり。
いつもよりも華やか。
そう。
華やかという言葉がこれほど相応しい日はなかなかないのではないだろうか。
そんなことを考えながら。
遠くからみんなの姿を見ていたい。
華やかなピンクのオーラをそっと見守ってみたい。
微笑ましい気持ちでじりじり後方に下がる。
そんな華やかな集団を眺めていたその時に、背の高い人が視界を遮った。
華やかな集団に目もくれずまっすぐ進む人。
私は背後からそっと回り込み、あなたの左腕に触れてみる。
「おっ」
目を見張り口元には微笑みを感じた。
先月話したことで打ち解けてきたのだろうか。
「こんにちは。」
頭を下げる。
「こんにちは。」
「暑いですね。」
「そうですね。もうこんな季節なんですね。」
会釈し合い別れた。
私の胸は高鳴りもしない。
波打つ事も無い。
会話を反芻する事も無い。
冷静だ。
クーラーは効いている。
最後に部屋を出る人が止めるまでずっとクーラーは起動している。
そりゃカビ臭くもなるよな、と、私は微笑ましい気持ちになった。
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