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8月
抜けるような空
深い青が目に染みるようだ。
空は高く、白い雲がはきはきと明るい。
自転車に照り返す光。
額から、頭から噴き出すのは汗。
蝉の音は気にならない。
坂道を懸命に自転車をこぐ。
涼しい館内には徒歩や自転車で大量に汗をかいた人たちで溢れていた。
私もそっとハンカチで汗をぬぐう。
残りの汗はすぐに冷気で吹き飛んだ。
私からあなたへ、先日依頼していたことについて進捗状況を聞きに向かった。
私はそっとあなたの左横に座る。
「こんにちは。」
「どうも。」
ちらっとこちらを見てあなたはそのまま黙ってしまった。
何やら作業をしていたようだ。
手を休ませてはいるものの一向にこちらを見ない。
私はあなたの青色のスニーカーの先を見つめるしかなかった。
タイミングが悪かったのかな。
「お忙しいところすみません・・。」
「はあ。」
「先日お願いしていたあれなんですが・・・。」
一拍置いて再度手を動かしたあなたは、下を向いたまま答えた。
「その件は別の人に頼みました。林さんに聞いてください。」
「・・・ありがとうございます。」
私は立ち上がりあなたに背を向ける。
あなたも私には話し掛けてこない。
もちろん追いかけても来ない。
いいの。
うん。どうせ。
こんなものだもの。
外に出る。
雲一つない空は寂しいから、私は海側を見る。
海の上には入道雲。
もくもくもくもく
でも青い空は変わらない。
白い雲が大きく幅を利かせても、空は何も変わらない。
大量に蒸発した汗はシミになるかもしれない。
私は向こうを見据えまた自転車を漕ぎはじめた。
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